ドラマ「火星の女王」は、2125年の火星を舞台に展開する人類移住40年後の壮大なSFドラマであり、未知の物質スピラミンの発見を契機に火星と地球の対立が激化する様を描いた物語です。
2025年12月、NHK放送100年特集として全3話で放送されたこの衝撃作は、直木賞作家・小川哲の同名小説を原作に、100年後の火星社会が抱える葛藤を描き出しています。

今回は、見えない未来に見えない希望を見出そうとする人々の物語と、最後に何が待ち受けていたのかをネタバレで解説します。
- 2125年火星を舞台にしたSFドラマの全容
- リリとアオトが海で再会する最終回の結末
- 未知の物質スピラミンが引き起こす対立
- 原作小説とドラマ版の大きな違い
- 監視社会や格差を問う現代的テーマ
- 視聴者の感動と戸惑いの声
【完全版】火星の女王あらすじ最後ネタバレ|リリとアオトが地球の海で再会する感動の結末を徹底解説

火星の女王の基本情報と世界観
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 放送局 | NHK総合・BS4K |
| 放送期間 | 2025年12月13日・20日・27日(全3話) |
| 放送時間 | 毎週土曜 夜10時〜11時29分 |
| 原作 | 小川哲『火星の女王』(早川書房、2025年10月22日刊行) |
| 脚本 | 吉田玲子 |
| 演出 | 西村武五郎、川上剛 |
| 主演 | スリ・リン、菅田将暉 |
2125年の火星——人類が辿り着いた歪な社会

2125年。人類が火星に移り住んで40年、そこに”安定”という言葉は存在しません。
2085年、地球資源が枯渇し人類は火星移住と鉱物採掘を開始しました。移住者は地下生活を余儀なくされ、最低気温マイナス140℃、酸素もなく放射線が降り注ぐ死の大地で必死に生き延びてきました。
現在、火星には約10万人が13のコロニーで暮らしています。しかしISDA(惑星間宇宙開発機構)による「地球帰還計画」が進行中です。レアメタルの採掘が採算割れし、火星への投資は減少した結果でした。
火星の住民たちは手にタグを埋め込まれ、ISDAがすべての水、食料、エネルギーを掌握し、住民のタグ登録を義務づけました。行動ログは24時間監視され、自由はありません。
だが、その管理から逃れようと自らタグを外した「タグレス」と呼ばれる人々も現れ始めていました。
物語の核心——未知の物質スピラミンと主人公たちの運命

全てを変えた発見
地球でキャリアを失い火星へ渡った科学者リキ・カワナベは、火星で採れるスピラミンという物質に、どれだけ距離が離れていても、光速を超えたレベルで同時に結晶構造を変化させる特性があることを発見しました。
この発見は火星に新たな希望をもたらします。超光速通信——地球と火星の情報格差を埋める技術です。
未知の物質はウランやプルトニウムをはるかに超える超重元素で、ばく大なエネルギー源になりうるものの、扱いを誤れば惑星が爆発する危険性も孕んでいました。
リリ——地球を夢見た盲目の少女
火星生まれのリリ(スリ・リン)は、火星を統治する組織ISDAの地球帰還計画に参加し、母タキマ(宮沢りえ)や恋人アオト(菅田将暉)が住む地球に移住しようとしていました。
リリは、生まれつき視覚障害がある22歳。ラジオ好きで、ラジオから流れた曲を聞いたことで地球のバンド「ディスク・マイナーズ」のファンとなります。
目は見えませんが、音楽を通して地球に憧れを抱き、厳しい重力訓練を乗り越えてきました。
しかし運命は残酷でした。帰還便に乗る直前にリリは突然拉致されてしまいます。
白石アオト——約束を胸に生きる地球の青年
白石アオトは、ISDAの日本支局に勤める若手職員です。火星で行われた研修でリリと出会い、互いにディスク・マイナーズのファンであることから意気投合しました。
二人の間には、まだ誰にも話していない約束がありました。アオトはリリが地球に来るのを心待ちにしていました。だが、リリの誘拐事件が全てを狂わせます。
父が22年前に行方不明、その原因がある科学者のせいではないかと疑い続けています。22年前の謎の物体と、今火星で起きている騒動。二つの事件が、やがてアオトの家族の過去と結びついていきます。
個人的な見解
菅田将暉の演技が本当に素晴らしかったということ。「理解するのに時間がかかった」と苦笑しつつ、「ロマンや愛がたくさん詰まっている。未来を描いているけど、結局は人間のこと」と語った彼の言葉通り、SFの外見をまといながら、本質は人間ドラマ。
第1話から第2話——加速する対立と明らかになる真実

第1話:誘拐と発見
火星生まれのリリが「ISDA」の地球帰還計画に参加し、母タキマや恋人アオトが住む地球に移住しようとするところから始まります。しかし、帰還便に乗る直前にリリは突然拉致されてしまいます。
拉致したのは地球帰還計画に反対する火星の住民たち——タグレスの集団でした。彼らは計画の秘密を暴露し、住民たちは激昂しました。
一方、22年前に謎の物体が地球で引き起こした超常現象を研究するカワナベは、火星にも同じ物体があると信じ各地を探索。そしてついに、スピラミンを発見します。
ホエール社CEOのルーク・マディソンは記者会見で「新種の生命体を発見した」と発表し、地球の団体の力を借りず研究を進めると宣言しました。
この発表が火星と地球の緊張を一気に高めることになります。
第2話:隠された陰謀
リリが地球帰還計画に隠された恐ろしい秘密を知ってしまいます。火星で見つかった”物体”には膨大なエネルギーが内包されていることが判明しました。
なんとしても火星と地球、両方の物体を手に入れたいISDAは、カワナベのかつての同僚の息子アオトに、22年前に地球で行方不明になった物体を探すように命令しました。
個人的な見解
この辺りから物語の緊張感が一気に増してくること。22年前の謎と現在の事件が絡み合い、視聴者を引き込む展開になっていく。
NHKドラマ公式サイトでは各話の詳細なあらすじが確認できるので、見逃した方はチェックしてみて(見るのは有料)。
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スリ・リン×菅田将暉
— Prime Video(プライムビデオ) (@PrimeVideo_JP) December 28, 2025
NHK 放送100年特集ドラマ
『火星の女王』見放題配信中
〈ゲームの王国〉で
2018年第31回山本周五郎賞に輝いた
日本小説界の鬼才《小川哲》が原作。
映画『聲の形』『きみの色』で
感情を繊細に紡いだ《吉田玲子》が脚本。
本作は息をのむほど美しい本格SFドラマ‼ pic.twitter.com/pZmKvXm5bq
ISDAにリリを誘拐した犯人から地球帰還計画を即時中止するように要求が入り、マディソンはスピラミンと共に火星国を建国することを宣言する事態に発展しました。ISDA内では開戦の意見も出始めます。
第3話(最終回)——明らかになる真実と衝撃の結末【ネタバレ】

解放されたリリと母タキマの真実
解放されたリリは地球帰還計画の秘密を火星住民に暴露します。リリはその恐ろしい計画の首謀者が母タキマなのではと疑っていました。
地球帰還計画の本当の目的——それは火星に残る人々への空気と水の供給を打ち切り、強制的に撤退させるというものでした。母が関わっていたという事実は、リリにとって受け入れがたい現実でした。
物体の驚くべき機能と事態の収拾
ISDAは、警察や軍まで総動員して物体を確保しようと試みます。アオトの協力で物体の驚くべき機能を発見したカワナベたちは、その力を利用して事態の収拾を試みます。

22年前にアオトの父・白石恵斗が関わっていた物体と、火星で発見されたスピラミン。二つの物体は互いに共鳴し、光速を超えた通信を可能にします。
この技術が、地球と火星の関係を根本から変える可能性を秘めていました。
個人的な見解
ここで描かれるテクノロジーと人間の関係性が非常に興味深いということ。技術は希望にも武器にもなる。使う人間次第。この普遍的なテーマが、100年後の設定だからこそ鮮明に浮かび上がります。
リリとアオトの選択——ついに叶った約束
混乱の中で複雑に絡み合った真実が明らかとなっていきます。スピラミンを巡る争いは収束へと向かい、リリは遂に地球へ帰還する機会を得ます。
そして——長く待ち望んだアオトとの再会が実現しました。
地球の重力に慣れない体で立つリリ。それでも彼女の顔には笑顔がありました。アオトが差し出した手を取り、二人は共に歩き出します。
海へ行きました。火星では決して見ることのできなかった、広大な青い海です。

波の音、潮の香り、砂浜の感触——リリは目が見えなくても、地球のすべてを感じ取っていました。「これが、海なんだね」と呟くリリに、アオトは優しく語りかけます。
語り合う二人。遠く離れていた時間、それぞれが抱えていた想い、そして未来のこと。火星と地球の対立はまだ完全には解決していないかもしれません。
でも、こうして二人が同じ場所で、同じ時間を共有できている。それが何よりの希望でした。
個人的な見解
このラストシーンこそがドラマ最大の見せ場だったということ。SFという壮大な設定を経て、最後に描かれるのは二人の人間が海辺で語り合うというシンプルな情景。でもそのシンプルさの中に、すべてが詰まっている。
原作小説では火星の独立やAIといった問題が未解決のまま余韻を残す結末ですが、ドラマ版はより希望に満ちた結末を選びました。距離を超えて結ばれた二人の絆が、未来への光となります。そんなメッセージが込められています。

視聴者の反応と批評家の声
放送中から数日が過ぎた現在までネット上には「映画並みのスケール」「NHKの本気度がすごい」などの称賛と、「よくわからなかった」「壮大すぎてしんどい」などの戸惑いで二分されています。
特に最終話でリリが地球に帰還し、アオトと再会して海へ行くシーンについては、多くの視聴者から「泣いた」「やっと報われた」という感動の声が上がりました。
火星では見ることのできなかった海を、目が見えないながらも全身で感じ取るリリの姿に、視聴者は深く共鳴したようです。
確かに難解な作品でした。舞台は地球と火星、時代は100年後の2125年、多言語が飛び交う字幕ベースの画面——「放送100年特集ドラマ」にふさわしいスケールであることは間違いありません。
個人的な見解
この作品の真価は一度見ただけでは理解しきれないということ。近年の視聴者は一回限りの視聴ではなく、録画や見逃し配信で繰り返し視聴する傾向にあるようです。
俳優陣の評価も高いです。特に国際オーディションで抜てきされた台湾出身のスリ・リンの繊細な演技は絶賛されました。
シム・ウンギョンは「100年前でも100年後でも、人と人をつなぐ気持ちは変わらない」と語り、岸井ゆきのは「いろんな国の人たちが生活する火星は、いまの社会とも地続き。手を取り合うのは現代でも大切」と作品のテーマを語りました。
作品が問いかけるもの——現代への警鐘

監視社会とプライバシー
タグによる住民管理システムは、現代の監視社会を極端な形で表現しています。便利さと引き換えに失われる自由——これは今を生きる私たちへの問いかけです。
格差と分断
地球と火星の関係は、先進国と途上国、都市と地方の関係性を象徴します。
火星の住人という設定を通して、私たち地球で暮らす人間にどんな気づきを与える作品になるのでしょうか。世界各地で紛争が起きる中、どのように共存していけばいいのでしょうか。
距離というテーマ
地球と火星の物理的距離は、人と人との心の距離を象徴します。
通信に片道5分、往復10分のタイムラグ——リアルタイムでの対話ができない世界で、人々はどう理解し合うのでしょうか。SNSで瞬時につながる現代だからこそ、この問いは重いです。
個人的な見解
このドラマが単なるSFエンターテインメントではなく、深い社会批評を含んでいるということ。NHKだからこそここまで突き抜けられるという希少価値の高さがあります。視聴率やスポンサーのしがらみがない分、作り手の思想が純粋に表現されています。
Q&A
- Qドラマ版と原作小説の違いは?
- A
ドラマ版は原作よりも希望的な結末となっています。リリが地球への帰還を果たし、アオトと再会して海で過ごすシーンが描かれるなど、二人の絆が実を結ぶ展開です。原作は余韻を残す終わり方ですが、ドラマは視聴者に明確な希望を示す結末を選びました。
- Qリリとアオトは最後に会える?
- A
はい、リリは地球への帰還を果たし、アオトと再会します。二人は海へ行き、語り合うシーンが描かれます。長く離れていた時間を経て、ついに同じ場所で同じ時間を過ごせる喜びが丁寧に表現されています。
- Qスピラミンは実在する物質?
- A
架空の物質です。ただし、量子もつれという実際の物理現象をベースにしており、完全なフィクションではありません。科学的根拠を持たせた設定になっています。
- Q第3話の最終回だけ見ても理解できる?
- A
難しいです。1話から積み重ねた伏線が回収されるため、全話視聴を強く推奨します。NHKオンデマンドで見逃し配信も行われているので、そちらで視聴を。
- Q子どもと一緒に見ても大丈夫?
- A
中学生以上なら問題ありません。ただし複雑な社会問題や政治的テーマを扱っているため、小学生には難しいかもしれません。親子で議論しながら見るのも良いでしょう。
まとめ:火星の女王ネタバレ!あらすじから最後まで
「火星の女王」は、100年後の火星という舞台を借りて、今を生きる私たちに問いかけます。
監視社会、格差、分断、そして距離——これらは全て、現代社会が抱える問題そのものです。宇宙という広大な舞台で描かれるからこそ、人間の小ささと、それでも希望を捨てない強さが際立ちます。
リリとアオトの物語は、恋愛ドラマではありません。それは、理解し合おうとする人間の意志の物語です。
見えない目で未来を見つめるリリと、遠く離れた恋人を想い続けたアオト。二人はついに再会を果たし、地球の海で共に時を過ごします。その姿は、距離も障害も乗り越えられるという希望を私たちに与えてくれます。
「90分枠の連ドラ」という民放ではまず見られない海外作品のような斬新な編成でもあり、「火星の女王」は2025年を締めくくる連ドラにふさわしい作品となりました。
この作品を見た後、私たちの日常の見え方が少し変わるということ。当たり前だと思っていた自由、当たり前だと思っていたコミュニケーション。それらが実は奇跡的に儚いものだと気づかされます。
そして、だからこそ、今ここにある繋がりを大切にしたいと思えます。それがこのドラマが残してくれた、最も価値あるメッセージだと思います。
100年後の火星で描かれた物語が、今を生きる私たちの心に火を灯します。見えない未来に、見えない希望を見出す勇気を与えてくれる。それが「火星の女王」という作品の真の力です。
- 2125年の火星が舞台の全3話ドラマ
- 直木賞作家・小川哲の小説が原作
- 火星には約10万人が13コロニーで暮らす
- スピラミンは超光速通信を可能にする物質
- リリは視覚障害を持つ22歳の火星生まれ
- アオトはISDA日本支局の若手職員
- リリは誘拐されるも最終的に地球へ帰還
- 二人は地球の海で再会し語り合う
- ドラマ版は原作より希望的な結末
- NHK放送100年特集として制作された作品
本記事の情報は2025年12月時点のものです。見逃し配信等の最新情報はNHK公式サイト(視聴は有料)でご確認ください。※Amazonプライムは30日間無料視聴。
スリ・リン×菅田将暉
— Prime Video(プライムビデオ) (@PrimeVideo_JP) December 28, 2025
NHK 放送100年特集ドラマ
『火星の女王』見放題配信中
〈ゲームの王国〉で
2018年第31回山本周五郎賞に輝いた
日本小説界の鬼才《小川哲》が原作。
映画『聲の形』『きみの色』で
感情を繊細に紡いだ《吉田玲子》が脚本。
本作は息をのむほど美しい本格SFドラマ‼ pic.twitter.com/pZmKvXm5bq




個人的な見解
この設定が驚くほど現実的だということ。植民地政策の失敗、資本主義の論理で切り捨てられる人々——100年後の火星が、実は今の地球そのものを映し出している気がしてならないです。